やっとこどもが寝付いた。
湯上がり、バスタオル一枚のサトシがそーっとやってきて、そーっと冷蔵庫開けて缶ビール取り出す。
プシュ! でこども、起きたことあるから、そこで開けないで、と仕草すると、サトシはこそこそと首をすくめた感じでリビングへと逃げてゆく。
あれ?
肩…
噛み傷…?
 
吸血鬼にでもやられたのかっておもったわよ。
でも吸血鬼なら牙痕よね。
完全に輪っかなのよ。
前歯、門歯、奥歯の痕まで。
 
猿かな。
 
女性じゃないの?
 
やっばーい。
 
悪友どもは笑うけど、誰も本気で言ってはいない。
イタル(さん)は子煩悩。
生真面目。
仕事の虫。
キャラはみんなに知れてる。
私は幸せな妻…
 
元気のない態度の私に、珍しく父が気づいた。
 
 
 
 
パパが到に久しぶりに会いたいって。
 
親父さん?
 
遊んでほしいんじゃない?
真弓と裕一郎さんがカナダ行っちゃったし。
きっと寂しいのよ。
 
真弓さんは妻の妹。
裕一郎君は真弓さんの連れ合いだ。
ほんとの弟妹みたいで結構好きだったんだが。
お義母さんは苦手。
浅薄な思考だだ漏れ。
お義父さんは・・・
お義父さんはちょっとつかみどころがない。
 
わかった。
次の有給に。
 
言いながら、思う。
次有給なんていつ取れるんだ??
 
 
 
 
と思ってたら、なんと!翌週軽々取れたのだ。
思わず鳥島を見たが、彼女は、
 
私なんにもしてません!
 
と、ボディアクションで答えやがった。
ほんとであることは、思考質でわかる。
運、か?
夕食を一緒にということだったが、出発直前に、鳥島たちの世代の考課を書かなくてはならなくなり、妻の実家についたらもう4時だった。
 
よっぽど私に会いたくないのね。
 
母仲間の会に行く義母を、ひどく当てこすられながら送り出し、妻、義父、俺で酒を酌み交わす。
他愛もない会話。
いつ、うちの会社に移る、とか、こどもは将来何にするのかとか。
そんなの今は答えられない。
ベビートーカーから不意に、
 
ふええええ
 
と悲しい声が出た。
瞬時夫婦で顔を見合わせたが、
 
いい。あたし行く。
パパを構ってあげてて。
 
妻がこども部屋に去った。
妻の父。
三十くらいの子だと言うから五十五才くらいか。
若いし、精悍だ。
 
うちの父はもうぼろぼろなのにな。
こないだ田舎に電話したら、俺相手に、
 
どちらさまでしょうか
 
って言いやがって。
老いぼれるにはまだ早いだろう…
 
とよそごとを考えていたら、お義父さんに一献勧められた。
大して強くない俺は、この最後の一押しで、意識消えた。
 
 
 
 
誰かが俺に触れている。
しつけーよ高木、もう三ラウンド目だぞ。
高木、が、いるわけはない。
ここは妻の実家で、俺は、義父と、サシ飲み…
 
はっと身を起こすと、俺のワイシャツは見事にはだけられ、ネクタイは緩く胸元で弧を描いていた。
義父は俺の前。
ソファに凭れている。
意識を失う前と同じ位置。
けれど、俺の肩の噛み傷は、確実に二つ増えていた。
 
 
 

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